BLOG文章表現

日本語教育、留学生の作文教育、日本語の文章や表現の備忘録です。

研究生希望の方へ

最近たまに研究生希望の問い合わせが来るので、希望者の方へ5つの質問を書いておきます。
特に、日本留学希望の外国人の方に読んでいただきたいと思います。

************************************************************

●質問1 興味は?「どうして日本語教育の研究をしたいのですか?」 

日本語の文章や日本語教育の作文に興味がありますか?
興味があると答えた方は、興味を持ったきっかけはどんなことですか?

私の研究の関心は日本語学の文章論(文章構造や表現の研究)、日本語教育の作文教育(中上級学習者のアカデミックライティング)です。
日本語教育や日本語や日本文化に興味があって日本語教育の大学院に行きたいから、という漠然とした志望動機の方はお断りしています。


質問2 能力は?(特に留学希望者へ)「日本語で何ができますか?」

読む・聞く・話す・書くの4技能について上級の日本語力がありますか?
上級の日本語力を証明するものはありますか?(日本語能力試験1級合格など)

日本語教育の大学院なので、高度な日本語力が要求されます。
日本語の専門文献を読む、講義を聴く、授業で発表して質疑応答をする、レポートや発表資料を書く、という日本語力です。
それから、基礎的な日本語学日本語教育の専門知識も必要です。

受験勉強と大学院1年次の授業の受講によって大学院で必要な日本語力や専門知識はある程度は身につけることはできます。
しかし、その基礎となる日本語力がないと、たとえ1年間研究生をして大学院入試を受けても合格は難しいでしょう。
だから、最低限として日本語能力試験1級合格ぐらいの日本語力が必要なのです。


●質問3 費用は?「いくらぐらい使えるお金がありますか?」

国費などの奨学金がすでにありますか?
私費なら、授業料と生活費はどのようにして払いますか?

大学院の研究と生活にはお金がかかります。
現在いくらぐらいのお金があるか、大学院でどのぐらい必要になるかを具体的に計算してみましょう。
人生の貴重な時間を大切にして、自分の使えるお金と時間を効果的に使ってください。


●質問4 将来は?「大学院を出たら何をしたいと考えていますか?」

大学院を修了したら、具体的にどのような仕事をしたいのでしょうか?
大学院を修了すること自体を目的にしてはいけません。

大学院に限らず、学校生活は人生の通過点のようなものです。
通過した後にどんな仕事をしたいのか、具体的に考えてみましょう。


●質問5 覚悟は?「なぜわざわざ日本語教育の大学院へ行きたいのですか?」

大学院に行かなくても研究はできます。
外国人の方なら自国の大学院へ進学しても希望する研究ができる場合もあります。
それでも大学院に行く理由は何か、自問して短い具体的な答えが出てきますか。
出てこなければ大学院以外の進路を考えましょう。

*****************************************************


最後に、おまけです。
★★★助言
大学院に行くかどうか決める前に、大学院進学経験者に上の質問をしてよく聞いてみてください。
特に、専門が同じ人、自分が考えるような道筋をたどっている人、この人のようになりたいというモデルになる人に聞くといいでしょう。
いろいろな体験談を聞くことで、自分のしたいことばかりではなく、したくないのにさせられるかもしれないこともわかります。
その人の話をより深く聞くことで、今のその人がどのような過程を経てきたのかを知ることができます。
その人のようになるまでにはどんなことをしなければならないか、自分がこれからしようとすることを具体的に考えるためのヒントとなるはずです。
いいことも悪いこともあるでしょうが、それでも挑戦してみたいのか、よく考えてほしいと思います。
   

授業記録7後半(N)2009年2月17日

16:00 担任教師による要約文フィードバック
・今回の段落のまとめ方のバリエーションを再度整理
(1・2)3・4  1・(2・3)・4  1・2・(3・4)
・「みしまや」について、どのくらいの学習者がスーパーであると理解できていたかを挙手により確認。→茨城県における「カスミ」を例に挙げて説明

16:05 接続表現
・論点2の学習者のミニレポートを参考に挙げ、うまく接続表現を利用した文章がどういうものかを提示する。

16:10 論点3
・語彙「検診」(検査診断)と「健診」(健康診断)の違いについて
 検診→特定の病気かどうか診察(胃がん検診) 
健診→総合的な健康診断(メタボ健診)※実際は厳密な違いが見当たらない。
・「後期高齢者保険制度」についての説明
・「いわば」…「〜のような」と比喩的に例示「言ってみれば」「例えて言えば」
「すなわち」…別の表現への言い換え、言葉の説明じゃない
「つまり」…言い換えとしては詳しいもの、定義をいう
 →使い分けを練習問題で確認していく
 コンピューターネットワークは、いわば脳神経のように→     は違う
 彼女は(いわゆる)普通のOLで、… →     はイコール
・<抽象的な説明>→<具体的な説明>
 T大学は総合大学である。文系も理系もある…
 T大学は田舎の大学と言われていた vs 田舎の大学と言われている?
・時系列(客観的)⇔主観的
 1989年/1984(昭和59)年/昭和60年に入り⇔当時の/〜をきっかけに/やがて

<気づいた点>
・身近なことで具体例を挙げると学習者の反応はとても良い。
今回の授業では、「みしまや」の説明の際に、学習者がよく知っている「カスミ」を例に挙げ、茨城県と他県で知名度が大きく変わることを紹介したり、過去の一般論のところでは、「T大学は田舎の大学と言われていた」というような例文を提示することで、学習から笑いが起こっていた。
・表現の微妙なニュアンスの違いをより深く理解するためには、対比が必要である。
「いわゆる」「いわば」「すなわち」「つまり」のところで

授業記録7(N)2009年2月17日

15:20 今回の要約文の配布
振り込め詐欺」について知っているかをクラスに確認後、簡単に説明。
今回の要約文「騙されたふり作戦」、及び裏面の関連記事について主旨説明を行った後、要約開始。今回はもうヒントはなしで。

15:23 要約開始 → 要約文の回収、前回の要約文の返却

15:45 前回の要約文のフィードバック(実習生)

授業記録6(I)2009年2月10日(火)

授業の流れ
•新聞記事要約文(実習生)
•前回フィードバック(実習生)
•補足の接続表現

<時間•授業内容>
15:20 新聞記事要約開始(実習生)
新聞記事要約(逆チョコ)のプリント配布、〜15:35
「逆チョコ」の実物を見せた後、要約開始。

15:40 回収

15:40 前回新聞記事要約のフィードバック(実習生)

15:55 プリント配布
授業予定変更、宿題の案内(接続表現を使うこと)

16:00 補足の接続表現、短作文練習のフィードバック
• 別紙プリントは参照
• 補足の接続表現「ただし」「もっとも」「なお」「ちなみに」説明
*「ただし」と「しかし」
先行。ただし、後続。(先行が主になる)
先行。しかし、後続。(後続が主になる)
• 問1.( )に補足表現をいれてみよう の答え合わせ
• 短作文練習の学生たちが書いた例文を紹介

<授業の感想>
• 「によって」と「によると」は、確かに学習者たちに混乱しやす問題だと思う。このような注意すべき点を取り上げていてよかった。
• 補足の接続表現の正確な使い方(なお、ちなみに)は、学習者にむずかいいと思われるが、皆、問1はよくできていた。
• 短作文練習で、おもしろい例文が多かった。「溜め」の意味をよく理解していた。

授業記録4(I)2009年1月27日(火)

15:25 新聞記事要約のプリント配布
実習生による新聞記事要約(新型インフルエンザ)開始 〜15:42

15:45 回収•宿題配布

15:55 前回要約フィードバック
板書 東京都町田市の鶴川サナトリウム病院でインフルエンザが集団発生し、入院患者3にんが 死亡した問題で、/都と病院は18日、新たに入院患者、71〜89歳の男女5人が発症したと発表した。   発表したのは都と病院である!
   (病院によると)
   病院は全員に治療薬のタミフルを投与して、重症だった患者も熱が下がり、会話ができるまで回復した。
   (都によると)                         (と言われているが)
   インフルエンザウイルスの繁殖を防ぐためには50〜60%の湿度が望ましいとされているが、町田市保健所が13日に調査に入ったところ、湿度が15%しかなく加湿器を使用するよう指示したので、/都は加湿の状態が不十分だったとみて、感染拡大との関係を調査している。 保健所と都やっていることは別!
   都は、町田市保健所が調べた結果により、加湿の状態が不十分だったとして、感染拡大との関係を調査している。   「により」使って短く書ける

16:05 宿題フィードバック
ことば→Googleで検索する
•もやい
•ダマレダマレ
•理不尽
•「蟹工船」:小林多喜ニの小説。最近また人気である。
•右肩あがりの経済成長:急に上昇
•諦念
•ツテ
•先細り、先細る :鉛筆イメージする。
•生きてりゃ(いれば)

16:15 プリント「接続表現の確認」
順接の接続表現、逆説の接続表現、補足の接続表現説明
<順接> したがって(結論)だから→そのため(それに)さらに そして また
<添加> それで
<逆説> ところが→あまり使わないように(気持ちがはいってしまうので)
<補足>★ただし (話し言葉)      例外•問題点など
もっとも
★なお              注記
ちなみに
学生の質問 「また」と「なお」はどのように違うのか?
      ⇒「また」は単なる付け加え
学生の質問 「ちなみに」「ところで」とどのように違うのか?
      ⇒「ところで」は話題を変えるとき

授業の感想
• 新聞記事要約で、学習者が間違えが多かったことから、名詞修飾が長いとき、複文のとき、主語が何か混乱しやすかったことがわかる。
•「により」を使って短くする方法もあることを説明、学生が使った細かい表現まで皆が活用できるように、提示している。
• 接続表現のところで、学生たちが多く質問をしているのをみると、接続表現を普段使うとき少しむずかしく感じているようだ。

授業記録4後半(N)2009年1月27日(火)

16:05 ワーキングプア
<語彙の確認>インターネットで検索する方法も紹介「…とは」で検索
・「もやい」…「舫」船と船がつなぎ合って雨風をしのぐ。「催合」もある。
・「だましだまし」…その場しのぎで何とかする
・ツテ…手がかりとなる人
・「生きとりゃ」…「生きていれば」の縮約形
・「問うている」…昔からの日本語が残っているもの、「できぬ」など
※その他、「右肩上がり」「先細り」などを取り上げた。

16:15 接続表現
<順接>
・「だから」「それに」は口語的で論文には使えない。
「だから」→「そのため」、「それに」→「さらに」
・「それで」もやや口語的→「そこで」 
「そこで」の使い方(問題解決の行動、論文の序論)は(5)で確認。
・学習者から「「また」とはどう違うのか」質問
 →「それに」「さらに」「なお」「ただし」などは、Aに対する付け足し情報
(添加)としてBを述べるのに対し、「また」はAもBも同様に重要な情報である。「また」は内容も大きくは変わらないが多少変化する。
<逆接>
・「ところが」は意外性、予想と反することを意味することから、やや主観的
 になる。論文ではあまり使われない。(5)
<補足>
・「ただし」は前に述べたことに関して、例外、問題点などを述べるときに、論文でよく使われる。
・「なお」は注記的な情報を付け加える時に使う。(3)
・「ただし」「なお」を論文であまり使いすぎると、自身の主張に自信がないと受け取られる場合も…(教師の体験談)
・「ちなみに」を使うと、全く違う内容のことを話してもかまわない。(4)

<気づいた点>
・常にこの「書く」授業では、学習者が今後大学において論文を書く上で、必要となる表現、使うべき表現、使えない表現は何かに意識が置かれ、一貫している。
・要約文フィードバックを通して、このレベルの学習者にとっても、日本語文の主体を捉えることが、場合によっては難しいことが分かった。
・接続表現では、もう少し用例と練習問題があったほうが、具体的に理解しやすい。