BLOG文章表現

日本語教育、留学生の作文教育、日本語の文章や表現の備忘録です。

2010年度3学期J953書く

 実習生が書いてくれた授業記録です。上級(日本語能力試験1級程度)学習者を対象とした作文の授業で、レポート作成と新聞記事要約を行いました。

【概要】
 このブログでは、 「日本語教育実践研究?」実習の一貫として 留学生センターで開講されている「日本語上級・書く」クラスの授業記録を掲載していく。
 3学期(2010年12月10日〜2011年2月25日)を対象とする。

**************

【12月10日 第1回】
 初回であったため、3限と4限の両方の授業を見学したが、3限の授業に7名、4限の授業に12名の学生が来た。
 以下では3限の授業記録を示す。

 12:15 配布物(4点)の確認、新しい学生の確認  
 12:25 今日の授業の流れをホワイトボードに板書
     黒板の右側に書き、線を引くことで授業時の板書とは区別 
 12:30 シラバスを、プリントに沿って説明
      1.授業目的・内容
      2.教材
      3.宿題
      4.成績
 12:35   5.授業計画
      6.レポートの文体・表現・構成のチェック
 12:40 作文教科書の紹介
 12:45 作文力チェック(15分間)
     何時までかを板書
     作文のテーマは「日本留学の目的」(ただし、継続受講者はテーマを変えて作文)
     この時間の先生の活動:作文の見回り・名簿チェック・次の活動の準備・メモなど
 13:00 簡単に作文結果を確認
      また、作文の完成に手間取っている人を待ちつつ、これまでの作文経験などを聞く
 13:05 教材1の導入
     1.段落番号をつける
 13:10  2.わからない言葉のチェック
      初めの数段落を学生に1段落ずつ読ませながら確認
      「ノラ博士」「強いる」など
      3.定義に関しては授業で扱い、
      その後の状況・説明・列挙に関しては宿題とすることを指示
 13:20 新聞記事要約(15分間)
     3つの文で書くこと、終わらなかった人は宿題で
     12月15日(水)17時までに提出することを板書
 13:35


【12月10日 第1回 気づいた点など】
 ◇3限は学生の集まりがやや悪かったことと、授業の初めのプリント配布に手間取ったことで、やや遅れてスタートした。4限ではそれが改善され、13:45〜の5分間で配布物のチェックおよび今日の流れの確認が済んだ。したがって4限では3限よりも5分早く進んだため、3限では授業を5分延長したが、4限では授業時間ちょうどで終了した。

 ◇授業に来た学生の多くは日本語能力試験1級を取得しているようだった。

 ◇作文力チェック(15分間)
  先生は作文の見回りの他、名簿チェック、次の活動の準備、メモなどをしていた。

 ◇教材1・わからない言葉をチェック
 「強いる」という言葉がわからないときは、例えば「強制」という言葉をイメージしてみることを提案した。また「ノラ博士」という造語は、「ノラ犬」「ノラ猫」からのメタファーであること、また、そこにはマイナスイメージがあることを説明した。

 ◇新聞記事要約(15分間)
  先生はこの時間、作文力チェックの作文結果を確認、添削した。学生の早い人は、10分程度で要約を完成させており、ほとんどの学生が宿題ではなくその場で要約プリントを提出した。

 ◆全体を通して、新しい内容などを提示、説明する際には、まず学生に考えさせ、わかる人から意見を出させてみた上で、その学生の意見を使いながら(適宜補完しながら)説明をしていた。

 ◆今回は教材1の作文練習1を扱った。それぞれの授業で適宜説明がなされると思うが、作文練習1、2と最後のミニレポートに行く流れが、もう少し体系的に説明されていれば、全体を通して「何を、なぜ」するのかがより明確になり、成人教育としての効果も高まったのではないかと感じた。

★教員のコメント
「作文練習1、2と最後のミニレポートに行く流れ」の体系的な説明の必要性は重要な指摘ですね。次回の授業で補足説明したいと思います。例えば、どのような説明があれば体系的に学習者に学習目的が伝わると考えられますか。


【12月17日 第2回】
 ・今回は、学生の手元や目線を確認できる、前の席から授業観察を行った。
 ・4限の授業に出席した学生は8名
  (うち、少し遅刻したのが1名、大幅な遅刻が1名)
 ・既に板書されていた内容
   メインの黒板:今日のスケジュール(右スペース)
            作文練習2に関して(左スペース)
    サブの黒板:要約文1の添削例
 13:45 出欠確認、今日のスケジュール確認
 13:50 記事要約1の返却および口頭での簡単なフィードバック
 13:55 記事要約2(15分〜20分)
    早く終わった学生には記事要約2のプリントの続きを見ているよう指示
 14:15 宿題1を、1人ずつに簡単なコメントをしながら返却
 14:20 グループピア活動
    男性3名、女性4名の2グループにわかれ
    論点1の「わからない言葉」に関して知識の共有など
 14:30 論点1-作文練習2「客観的な表現」
     (1)4つの観点ごとに、主観的な表現を客観的な表現に書き換える
     学生をあてながら口頭で説明やまとめ
 14:45 (2)(1)の要領で客観的表現への書き換えを文章化
     先生の活動:見回り、大幅に遅刻した学生にプリントの返却など
     終わらなかった部分は宿題、全部をまとめて21日17時までに提出
 14:55 記事要約1のフィードバック
 15:00 


【12月17日 第2回より】
 ◇グループピア活動に関して
 お互いにプリントを交換させていたが、自分の提出した宿題に対する評価やコメントを他の学生に見られてしまうことを学生は特に気にしないものなのだろうかと感じた。
 また活動中は2名ペアずつに分かれた女性グループに入り、わからない言葉について一緒に考えたりしたが、わからない言葉ではなく「根本的原因」についての質問もあった。
 ↓
 ◆宿題1の4)に関して◆
 宿題1の4)では直接的原因(段落5〜7)と根本的原因(段落8〜11)をレポートに適した形式に文章化する必要がある。
 ピア活動で質問されたため興味を持ち、学生の宿題結果を見てみたところ、直接的原因と比べると、根本的原因では特に、理解不足と予想される解答が一定数見られた。これは本文の表現に、パラフレーズなく簡単な引用で済むような直接的な対応個所がなかったためと考えられる。
 表記上では大きな間違いがなく先生からも特に添削されていないが、おそらくこれも理解不足だろうと思われる回答もあった。また、「原因」と「結果」を混同しているのか、「原因」を述べるべき4)で、「結果」といえるような内容を主題にして書いた学生もいた。

 ◆さらに、宿題1の4)に注目するなかで◆
 配布テキストにおいて「無職博士が大量生産されている原因として直接的なものと根本的なものの2つが挙げられる。」の後に「一つは、〜。(一方/しかし)もう一つは〜。」を使用するようディスコースしている点にも疑問を持つようになった。
 例えば、ある現象に対して2つの原因が挙げられる場合、「一つは、〜。もう一つは〜。」の使用は当然適しているといえる。しかし今回の場合は直接的原因と根本的原因という、性質や位置づけの異なった(同レベルではない)2つの原因を順に挙げていくため、「一つは、〜。(一方/しかし)もう一つは〜。」という表現はやや適しておらず、「前者は〜。後者は〜。」などの方が良いのではないかと感じた。


【12月17日 第2回 気づいた点など】
 ◇記事要約2の配布に関して
 要約を始める前の、記事に関する背景や豆知識などを先生が話していた際、学生の多くは記事を読み始めていたり、次のページに何が書いてあるのかなどを確認したりしており、情報を受け流しているような傾向が見られた(学生からの反応が少なかった)。

 ◇記事要約2に関して
 6名は、ざっと記事を読んだ後にすぐ書き始めた。
 (3文を続けて書くのではなく「考える→書く」を1文ずつ繰り返していた)
 1人は初めの5分程度は書き始めず、読むことに集中していた。

 ◇50分と、大幅に遅れた学生に対して
 授業は流れを止めずにそのまま続け、各学生の作業の時間にプリントを返却していた

 ◆作文練習2
 主観的な表現にまず下線を引かせて意識化させたのちにパラフレーズに移らせたのは効果的だったのではないかと思った。
 『客観的な表現に直すとどうなるか』といった、「答え」についてはほとんどの学生がメモをとっていたが、例えば『「〜てしまう」の表現は、間違いではないが多用すると読み手を疲れさせるため、1回程度の使用が効果的である』など、「表現の使い方」に関する先生の説明をメモしている学生は数名程度と少なかった。

 ◆記事要約1のフィードバックに関して その1
 上級「書く」の授業を新しく受講した学生に対して、口頭で簡単なフィードバックをした後、すぐに記事要約2が配布された。サブの黒板を使用したフィードバックは授業の最後に行われたが、記事要約2の前に行われれば、1のフィードバック内容を2に生かすことができたのではないかと感じた。 

 ◆記事要約1のフィードバックに関して その2
 授業の最後に、サブの黒板を使用しながら、?構成、?主語に注意して
 「縮小コピー」となるよう注意が必要なことを説明した。
 サブの黒板の右側には参照にすべき記事本文の抜粋、右側の大きなスペースに添削モデルを書いていた。サブ黒板に示した学生の文章に対する添削は、書き込ながら示すのではなく3限で書き込んだ後のものをそのまま使って説明した。
 ↓
 この3限と4限の提示方法の違いが学生に何らかの違いを生むかどうか、気になった。時間的には4限の方が短縮できるため効率的ではある。

★教員のコメント
授業を教師・学習者・第三者という複眼的な視点からよく観察できていますね。原因についての作文は、「原因」に焦点をあてるなら、「一つは」「もう一つは」、「直接的」「根本的」という「原因」の2種類の分類に焦点をあてるなら、「前者は」「後者は」となると考えます。学習者の根本的原因の理解不足は、原文の書き方が直接的原因に比べて端的な表現になっていないことも一因でしょう。この授業では原文は読解対象というより、情報のリソースとして用いているので、初期の練習としては表現の使用の適切さを重視して、原文の内容の適切な理解は優先していません。


【12月24日 第3回】
 13:45 今日の流れの確認、要約3に関する豆知識や背景の説明
    ・今日の出席は8人
 13:50 要約3(15分間)
    ・2〜3分後に、ほとんどの学生が書き始め
     12分後に数人が完成させていた
    ・先生は適宜見回りし、早く終わった人は裏の資料を読むよう指示
    ・学生の要約結果を見回った上で、今回の要約記事は数値の説明や
     その数値の解釈が中心であり、いかにそれらを短くまとめるかが
     ポイントであることを指摘
 14:05 要約3の回収および要約2の返却
    ・返却の際には個々に一言ずつフィードバック
 14:10 要約2全体フィードバック
    ・「非実在青年」という言葉に関して
    ・「否決された」→「否決されていた」がbetterであることの説明
    ・反対意見をまとめて1文にした場合や、反対意見+再反対意見で
     1文にした場合などを提案
 14:20 宿題(作文練習2)のフィードバック
    ・個々のフィードバックをしながら返却 
    ・テキストの訂正個所を指摘
    ・全体へのフィードバック:反問表現に関して
 14:25 ミニレポート1(宿題)に関する説明
    ・論点1を学んだ上でのミニレポート1では、極力オリジナリティーを
     出すよう指示
    ・利点のみや問題点のみではなく、両方を挙げた方が良いことを示唆
 14:35 ミニレポート1 作業(1)
    「事実、利点、問題点を書き出してみる」
    ・3限の授業で出されたものをいくつか発表し例示
    ・小さめに切った裏紙(メモ)に、1枚に1つの内容を書くよう指示
    ・論点1の文章では出なかった内容を極力挙げるよう指示
 14:45 メモ内容の発表および、簡単な分類
    ・読み上げられたメモ内容が事実、利点、問題点のどれにあたるかを
     少し考えながら聞く時間
 14:50 早めに授業終了(クリスマス・プレゼント)


【12月24日 第3回 気づいた点など】
 ◇今回は教室の後ろから、授業の流れや先生と学生の様子を観察した
 ◇要約3のプリントを配布する前に、豆知識や背景に関する説明をしていた
  ⇒学生側に反応が見られたため、先生の説明がよく聞けていたようだった

 ◆ミニレポート1に関して
 ・メモ内容発表後の分類(事実、利点、問題点)は、学生の人数が多くない
  ので付箋を利用したKJ法で一緒に考えるのも良かったのではと感じた
 ・学生から出された「事実」には、憶測や曖昧な記憶に基づいているような
  ものも見られた
  ⇒ミニレポート1で挙げる「事実」のうち最低1つについては、実際に自分
  で本や新聞記事を読んだり、省庁や大学のサイトで数字を確認したりして
  得た事実を使用するよう規定することで、引用した事実を利用して自分の
  主張を展開する練習にもなり、さらに良かったのではないかと感じた
  (できる限り「論点1」以外のソースからの引用を促すなどして)

★教員のコメント
確かにレポートに取り上げる「事実」を集める方法や検証する方法もレポート作成には必要ですね。


【1月7日 第4回】
 13:45 冬休みをどのように過ごしたか、
     日本人の大晦日・正月の過ごし方について
 13:50 要約4
   ?記事の簡単な内容を紹介、「スカスカ」についての説明
   ?プリントを配布して14:10まで記事要約
 14:10 要約3 フィードバック
   ・要約結果の概観(先生のコメント)
    主述関係を要約の形にまとめるのが意外と難しかったようだ
   →『リクルートの「ワークス研究所」が回答を得た。その調査結果を、
    リクルートが発表した』という関係性がわかっているかどうか
   →サブの黒板を使った、要約例の添削およびその説明の中で
    『自社の研究機関「ワークス研究所」の4495社への調査結果
     によると/によれば』という表現を導入
   →そのほかのNG例を口頭で説明
    ×「〜(事柄)が発表された」
    × 調査を行ったワークス研究所が発表したかのように聞こえるもの
    ×「リクルートとワークスは」という使い方
 14:20 ミニレポート フィードバック
   ?ミニレポート作成時に学生に参考資料として配布したものの説明
   →実習生(私)が資料作成を行ったため、授業で数分説明を行った
   ?2人組のピア活動
   →相手のミニレポートでは、どのような利点・問題点を述べているか
    それらをふまえてどのように自分の意見(是非)を展開しているか
 14:45 論点2
   ?プリントの配布
   ?題名に出てくる「溜め」という単語に関する説明
   ?キーワードに関する説明(板書あり)
    ワーキングプア無縁社会(cf. 地縁・血縁・社縁)
   ?順接、逆接、換言、補足に関する説明
    (プリントの資料を簡単に見ながら説明し、
     詳しいことは各自が家で読んでくるよう指示)
   ?宿題の説明 作文練習3の(1)(2)
 15:00 授業終了


【1月7日 第4回 気づいた点など】
 ◇今回の授業見学は教室の前のほうから行った。出席者は7名だった。

 ◇学生の様子
 ・要約3のフィードバック
 『自社の研究機関「ワークス研究所」の4495社への調査結果 によると/
 によれば』という表現を導入した際、メモを取った学生は1人で、ほかの

 6人は聞いているだけであった。せっかくの内容を聞き流していないか心配

 ・論点2
 キーワードに関する説明の際、板書をノートにメモしている学生が数名いた

 ◆時間配分
 ・14:05あたりから記事要約4が完成した学生が見られた。
  それらの学生に要約3の返却および一言フィードバックを行っていた。
 →要約が終わらない学生を待つ時間を、有効利用していた。
  学生が記事要約に慣れてきて、教師のその場でのフィードバックが必要
  なくなってきたようであれば、今回のように、終わった人から前回の要約
  を返却しフィードバックしていくのは効率よく時間が使える。

 ◆参考資料に関する説明(実習生)
 ・当日、少しのどが痛くて声があまり出なかったというのもあるが
  後ろに座っている学生にもよく聞こえるよう、声が通るよう
  実習などでは注意すべきであることを先生から指摘していただいた。
 →初級学習者に対する実習では、明瞭な日本語で話そうという意識が
  働くが、上級学習者に対しては無意識・無自覚に、母語話者の友人
  などに話すような口調になってしまいやすいことに気づかされた。

★教員のコメント
要約が終わった学生に早めに個別に対応すると、今度はまだ要約を終えていない学生の気が散るという問題も起こります。どのような対応がよいのかはクラスの人数や雰囲気にも左右されますね。


【1月14日】
 1月14日の授業は、センター試験の関係で休講でした。


【1月21日 第5回】
 13:45 記事要約5
    背景の説明、裏面資料に関する説明、プリント配布
 13:50 記事要約5(15分間)
 14:00〜 先生の見回り
    14:00すぎ 数名が終了
    14:05   全員が終了
    終了した学生に対し随時、要約結果の簡単なチェックと
    前回の記事要約4の一言コメントつき返却
 14:07 前回の記事要約4の全体フィードバック(サブの黒板を使用)
   ・「ル・タ・テイル」に注意すること
   ・「努める」
     努めるとしている/とする/とした
     努めようとしている/とする/とした
   ・「送る」
     送る という/ということである/としている/予定である
        という対応をとった
        ことになる/なった、する/した/している
 14:17 <告知>宿題提出日の訂正 
 14:20 レポートの構成に関する説明(プリント配布)
    ・ミニレポート1の結果から、新規の学生などに対し
     前提となる構成についての説明が必要と判断
    →事実と意見を分けて論じること
 14:25 論点2 宿題1の返却(一言コメントつき)
    宿題1の「わからないことば」に関するピア・ラーニング  
 14:35 複合動詞に関する説明(メインの黒板を使用)
 14:40 論点2 作文練習4
    ・4種類の<換言の接続表現>についての説明と練習問題
    ・4種類の<補足の接続表現>についての説明と練習問題
    ・作文練習(3)は宿題に
 15:00 ミニレポート1の、一言コメントつき返却
    (返却され次第、授業終了)


【1月21日 第5回 気づいた点など】
 ◇今回は教室の後ろの方から授業を見学した
 ◇出席した学生は7名

 ◆記事要約5
  今回は数値を中心とする、情報量の多い記事であったため
  情報の取捨選択とそのまとめに、いつもより手間取っている様子だった

 ◆前回の記事要約4の全体フィードバック
  「ようとした」という表現の説明において、大学院入試の面接を例に
  「論文を読もうとしました」≒読めなかった、まだ読んでいない
  のようなマイナスの評価につながりうることなどを示唆
  ⇒2月初めに大学院入試を控える学生が4名いたこともあり
   身近で具体的な例を示され、学生の反応も良かった
  ⇒メモをとる学生は限られていたが、
   黒板や先生への視線や反応は全体的に良かった
  (これまでの見学で、4限目の学生はやや授業への反応が少ないように
   感じていたが、単にまめにメモをとる人が少ないだけかもしれない)

 ◆レポートの構成に関する説明  
  ・3限目の学生から出た質問を紹介し、それに答える形式で
   具体的な説明までなされていたのでとてもわかりやすかった

 ◆ピア・ラーニング
  ・「てきぱき」「だましだまし」「右肩上がり」「つて」などの表現の意味
   などを学生間で共有した
  ・形式段落6の文章内で「国や経営者とは違って」に傍点が付されている
   のはなぜか、という疑問も出た

 ◆複合動詞に関する説明
  ・辞書に載っていないような動詞もあるため、いかに推測するか
  ・例:言ってのける、生きのびる、活かしきる、ひっぱりあう
  ・学生のメモ率が高かった
  ⇒予想以上に、複合動詞を難しいと思っている学生が多いのかもしれない


 ◆4種類の<補足の接続表現> 練習問題
  全てに「しかし」を入れることができるが、その場合は後述の文章が
  論のメインになり、文全体の文脈が変わってしまうということについて
  メインの黒板を使用しながらの説明があった
  ⇒レポートでも重要なポイントとなる説明であったためか、
   換言や補足の接続表現、「しかし」の使用に関して
   学生は適宜メモを取ってい

★教員のコメント
学習者がどのような説明のときにノートをとるのかよくわかりました。授業をやりながら感じたことですが、この授業は学習者の集中度が今までの授業に比べてよかったように思います。ノートのとり方と理解度は関係があるのか興味があります。


【2月4日 第7回】
 【3限】
12:15 記事に関する背景などの説明
12:20 記事要約7(15分間)
    12:30すぎから、要約が終わった人が見られ始める
12:35 記事要約7の回収、前回の記事要約6の返却
12:37 前回の記事要約6 全体フィードバック<18分>
12:55 記事要約6に関するピア・ラーニング

13:00 アンケート記入
13:10 アンケート回収、先生による内容の連結
    学生に感想を聞いたり、これまでの内容との関連性を説明したりした
13:15 振り替え授業や祝日(休講日)のお知らせ
    レポート提出日、宿題提出日の確認
13:20 論点3の配布、1〜7段落を一緒に読み進めながら適宜補足説明
13:30 

 【4限】
13:45 記事に関する背景などの説明
13:50 記事要約7(15分間)
14:05 記事要約7の回収、前回の記事要約6の返却
14:07 前回の記事要約6 全体フィードバック<13分>
14:20 記事要約6に関するピア・ラーニング
14:30 アンケート記入
14:42 アンケートを回収し始める
14:45 学生の感想を聞く、
    先生からのコメント(ピア・ラーニング活用に関して)
14:52 振り替え授業や祝日(休講日)のお知らせ
    レポート提出日、宿題提出日の確認
14:55 論点3の配布および紹介
15:00


【2月4日 第7回 気づいた点など】
 ◆記事要約の資料を作成するところから始まり、先生から非常に
  丁寧な指導を受けることができ、心から感謝している。
  特にフィードバックに関しては、ミーティングやリハーサルを
  重ねることで大幅な改善が図れたのではないかと感じている。

 ◆フィードバックの時間は10分程度を予定していたが、特に3限
  では非常に時間がかかってしまった。3限後のご指摘を参考に、
  漠然とした質問ではなく、何を答えてほしいのか、どこを見て
  ほしいのかが明確な質問を投げかけるよう心がけることで
  時間を短縮できただけでなく、学生の理解も4限の方が良かった
  ように感じた。
  同様の内容を扱うにしても、教師がどのようなQuestionを与え
  るかによって、学生の理解や授業の流れが大きく変わってくる
  ということを身にしみて感じさせられた。
  これも、4限だけでなく3限でもフィードバックを行ったことで
  感じることができた内容だと思う。

 ◆授業では次々に説明を続けたため、分かりにくい個所があったり
  学生が個々に疑問を持った個所があったりしたようだが、
  フィードバック後に行ったピア・ラーニングの時間に教師は
  見回りを行うことができたため、学生のいくつかの個々の問題を
  解決したり、合っているかどうかの確認を行うことができた。

★教員のコメント
1回目の改善点をすぐに修正して2回目の授業ができていました。改善の早さと柔軟な対応がよかったです。


【2月4日 第7回 先生からのコメントなど】
 ◇記事要約6のフィードバックは3限も4限も実習生が行った
 ◇3限の出席者は6名、4限の出席者は8名であった
 ◇以下、実習生が行ったフィードバックに関して、先生からの
   コメントやご指摘をまとめた

 ◆前日のリハーサルにおける先生からのご指摘(主なもの)
 ・話すスピードをそこまで遅くするする必要はないが、学生が
  先生の話している内容についてこれるよう、ポーズ(間)を
  とる必要がある。学生をよく見て確認しながら進めるべし。

 ・要約結果(A〜D)の提示の仕方を変えた方が、学生にとって
  わかりやすくなるのでは

 ・文法事項の解説は今回なしにして、文章の構成に関する説明
  に特化してフィードバックしたらよいのではないか

 ◆3限を終えての先生からのご指摘(主なもの)
 (4限に改善できる点)
 ・じっくり考えさせる時間ではないので、初めからヒントを与
  えるなどして、漠然とした質問をしないように注意。
  時間がかかると同時に学生にとってもわかりにくい。

 ・プリントの文章を読むときに顔が隠れないように注意する。

 (すぐには改善できない点:配布プリントの表記に関して)
 ・記事要約結果をAさん・Bさん…と提示すると「書いた人」が
  強調されてしまう。選ばれた人も選ばれなかった人も複雑な
  思いを持ちやすくなる。1つの例として取り上げ、没個性化
  すべきだった。(例A、例B…と提示)

 ・配布プリントの要約結果がACD、黒板の例がBとなっており、
  これは説明の順番に合わせたのかもしれないが
  プリントをABC、黒板をDの順にすべきだった。

 ◆4限を終えて
 ・3限よりも4限の方が、わかりやすかった。時間も短くなっていた。

 ・後ろから授業観察をする中で、ピア・ラーニングの活用方法など
  気づくことがあった


【1月28日 第6回】
 13:45 記事要約6の配布、要約方法や記事内容についての説明
 13:50 記事要約6(目標:15分)
 14:07 前回の記事要約5の返却
    (良くできていた学生が多く、先生からのコメントは少なめ)
 14:10 前回の記事要約5の全体フィードバック(サブの黒板)
    ・接続詞に注目したフィードバック
      ただし(補足)<一方(対比)<しかし(逆接)
     右にいくほど、前文脈に対する批判的なニュアンスが強まる
     →記事原文からは3つ全ての読み取りが可能だが
      どの接続詞を使うかでニュアンスが異なることに注意
 14:15 論点2 宿題2 コメントつき返却
    接続詞を使用した作例の共有(ピア・ラーニング)
    この間、先生は見回りをし、適宜学生からの質問に答える
 14:20 宿題2に関連して 補足説明その1(メインの黒板 左)
    ?換言(言い換え)
    ・「いわゆる/いわば」は「〜ような/ように」との共起が多い
    ?補足(付け加え)
     {主・A。} {ただし/もっとも/なお/ちなみに、 B。}
    ?逆接 (?との対比で説明)
     {A。} {しかし/だが、 主・B。}      

 14:25 宿題2に関連して 補足説明その2(メインの黒板 右)
     プリント配布→説明→練習問題
    ・〜という N、〜φ N、〜という/φ N
 14:33 ミニレポート2に関する説明、提出締切変更のお知らせなど
 14:37 映像
    ミニレポート2作成時の材料になりそうなNHKの映像を見る
 14:52 今回は早めに終了


【1月28日 第6回 気づいた点など】
 ◇今回は、記事要約の説明を担当していたこともあり
  教室の前のほうから授業を見学した
 ◇6名の学生が出席した

 ◆記事要約6
  資料の作成および授業での説明を実習生(私)が担当した。
  先生が3限の授業で同じ資料を使用した際に
  いつもの記事要約とは異なる点がいくつかあるため、
  初めに資料を配布してから、対応する内容を順に説明したほうが
  良いとのことだったので、4限の授業でもそのようにした。
  できる限り学生の反応を見ながら説明を行うよう心がけたが難しかった。
  3限では15分でなかなか終わらず、時間を延長したとのことだったが
  4限の学生は10分経った14:00すぎ頃に1名が終わり、
  目標時間の14:05には1名以外が記事要約を完成させていた。    

  学生に今回の記事要約について感想を聞いたところ
  難しかった、字数制限があったのでやりにくかった、などの声があった

 ◆作例の共有(ピア・ラーニング)
  話しことばで多用され、レポートでは使用しないほうが良い
  「要するに」という表現に関して、学生から、『「要するに」と
  言いながらもその後の説明が非常に長い日本人がいる』との意見が
  出て、興味深かった。

 ◆宿題2に関連して 補足説明2
  〜という N、〜φ N、〜という/φ Nの違いが名詞によって決まる
  という説明の後、何かの授業で習ったかどうか確認した。
  その結果、J800の文法の授業で習ったという学生がいたが
  そのほかほとんどの学生は、今回の内容を明確には知らなかったようだ

★教員のコメント
字数制限があって書きにくかったようですが、受講者はほぼ時間どおりに要約を書き終わっていましたね。どんな点が難しかったか、フィードバックの後で受講者に実習授業についての感想を書いてもらってはどうでしょうか。


【2月18日 第8回】
 13:45 おしらせ
     1.オフィスアワーに関して
     2.ミニレポート3に関して
 13:47 記事要約8の簡単な背景説明
 13:50 記事要約8(約15分間)
 14:10 記事要約8の回収、前回の記事要約7のコメントつき返却
 14:15 配布プリント「説明文を書く」
     客観的表現の練習
 14:35 前回の記事要約7の全体フィードバック
 14:40 論点3 宿題1のフィードバック
     1.わからない言葉について
     2.論点3の構造について
 14:52 3.本文中の接続詞と「〜てしまう」を探してみる
 15:00


【2月18日 気づいた点など】
 ◇2月9日の金曜振替授業は先生の体調不良により急遽休講となったため
  補講の代わりにオフィスアワーを設け、レポートのフィードバックなどを
  行うこととなった。
 ◇2月18日、4限の授業に参加した学生は6名だった。
  教室の前あたりから授業を観察した。

 ◆記事要約8
 ・今回の記事要約は最後ということで「ふりがな無し」の記事を使用したが
  13:50に始めて14:00過ぎあたりから、要約の終わった学生が出始めるなど
  かかる時間はいつもとあまり変わらない様子だった。

 ・今回の記事は、ワタミ創業者の渡辺美樹氏の都知事選出馬に関するもの
  であったが、第1段落の後半に書かれている渡辺氏の抱負(←出馬の理由)
  を抜かしてまとめている学生が数人見られたようで、早く終わった学生に
  先生が指摘をして修正させていた。
  記事の題名に「ワタミ創業者の渡辺氏が…」とあるように、経営畑からの
  立候補であることが記事全体のポイントになっているが、そこを読みとる
  のが留学生にとっては難しいということが明らかになった。

 ◆論点3
 ・「〜てしまう」に注目して論点3を見てみるというのは興味深かった。
  それまでは1段落に0または1回ほどの頻度でしか使用されていなかったが
  最後の結論(15〜17段落)の中の16段落で4回も使用されており、
  結論部でクライマックスになっているのがわかりやすい文章だと感じた。
  (ただ個人的には、その結論部での主張が「大規模な調査結果・解析を
  信頼すべし」という、予想可能なありきたりなものであったため、やや
  残念に感じた。)

 ・接続詞のうち、特に「しかし」は、その後に重要な主張が展開されること
  が多いため注意して読むようにとの指導があったが、丁寧に論点3を見て
  みると、段落の後半などで使用し主張を述べる場合と、特にそうではなく
  「しかし」+「つまり/だから」のセットで使用し論を展開している場合と
  があった。接続詞に注意してマークしてみることで、こういった接続詞の
  多様な使用のされ方にも気づけることが分かった。

★教員のコメント
「しかし→つまり/だから」の使用は興味深い指摘です。「しかし」の使用が文章展開の中で重要な論点を支える場合と、そうでない場合の区別の指標の一つになるかもしれません。


【2月25日 最終回】
 13:45 前回の記事要約8 コメント付き返却
 13:50 承諾書および授業アンケート配布
 13:52 資料「レポートの要約の書き方」配布、説明
    ・レポートや論文では人間中心ではなく事柄中心で書くこと
     →主語に「私は/筆者は〜」を使用しないよう注意
 14:05 自分の書いたミニレポート3の要約
    ・14:20頃〜
     →数人の学生は、まとめ終わった様子
      先生がその場でフィードバック、学生が適宜修正
    ・14:30頃〜
     →ミニレポート3、ミニレポート3の要約、承諾書、アンケートの提出
 終わった人から授業終了


【2月25日 気づいた点など】
 ◇今日の授業が最終回であった。4限に出席した学生は6名であった。
  教室の中盤あたりから授業を観察した。

 ◆自分の書いたミニレポート3の要約
 ・いつもは新聞記事を要約しているが、今回は自分の書いたミニレポートの要約
  であり、どのような結果になるか非常に興味がある。
  一度書いたミニレポートを要約させることで、構成的な面で学生が本当に理解
  していたかどうかが明らかになると考えられる。

 ・論点3の内容に対する論理的な批判などを「自分の感想」としている場合は
  事柄中心の文にまとめることが容易だと考えられるが、それが主観的な意見
  などの場合、内容自体が人間中心的なため、事柄中心の文にまとめるのは
  やや困難だったのではないかと感じた。
  また、授業の説明を受けて、「私は/筆者は」の提題表現と「と思う/のように
  感じる」などの叙述表現を省くこと=「人間中心の文を事柄中心の文に変える
  こと」なのではないかと推測されたが、授業内では特に明言されていなかった
  ため、そう言いきれるのかどうか、授業内容だけでは確信が持てなかった。

 ・ある学生のミニレポート3を使って、実際に要約してみる時間があったが、
  その学生の文章が手元にないまま、先生の読み上げを聞いていたので
  今 先生は原文を読んでいるのか、それを要約して読んでいるのかの違いが
  不明確で、結局よくわからないまま(どこをどのように要約したのか、など)
  一方的に提示されたような印象を受けた。

★教員のコメント
今回の要約は説明内容や方法が不明確でわかりにくかったようですね。意見の質とそれに適した表現という着眼点は興味深く読みました。「内容自体が人間中心的なため、事柄中心の文にまとめるのはやや困難」とのことですが、内容が人間中心のように見えても、言語表現として「人間中心」の表現を持たない、または文章ジャンルとして適切でない場合、そのような人間中心の内容をどのように表現すべきだと考えますか。つまり、日本語というシンタクス(いわゆる文法)の制約、文章ジャンル上の制約がある中で、書き手の言いたい内容をどのように言語表現に反映させていくか、という問題です。