BLOG文章表現

日本語教育、留学生の作文教育、日本語の文章や表現の備忘録です。

要約文での書き手の意図の再現

<主体>が<事柄>によって行われた。
<主体>が<事柄>を行った。

新聞記事の要約文を留学生に書いてもらうと、事柄中心の表現として書かれた記事原文を動作主中心の表現にしたり、その逆にしたりする要約文に出くわすことがあります。
同じ事実を見て書いたものとはいえ、違う視点から書けば、それは異なる表現であり、原文の書き手の意図とは異なる要約文ができます。
自他動詞のどちらを選択するかは、原文では何が主題になっていて、書き手の視点は動作主と事柄のどちらにあるのかを理解した上で選ぶことです。
要約文では記事の書き手が何を主題としているのかを変えずに原文のサイズを縮小します。
要約文は単なる言い換えではなく、原文の意味と書き手の意図を再現した「縮小コピー」なのです。


[再録]2007年2月19日
事柄中心と動作主中心の表現

  • 他の調査を作文で書く場合、「この調査はAによって行われた。」「Aはこの調査を行った。」のどちらも可能だが、自分が調査をした場合は、「この調査を行った。」しか言えない。自分が自ら調査したり資料として取り上げたものは他動詞構文を用いる。
  • 「Aは〜の調査を行った。この調査は〜に対して行われた。」だと、自分が行った調査ではなくなるのだが、それを自分の調査報告で書いている作文があった。モデル文章が他者の行った調査で、その表現の型をそのまま使用したためだ。また、自分が資料として使ったものの説明で、「〜は資料として使われた。」と書いた作文もあった。「〜を資料として使った。」と他動詞構文にすべきところだ。
  • 作文や文法で、事柄中心の表現、動作主中心の表現といったことで自動詞・他動詞の構文を取り上げる場合がある。単純な文作成練習をやってから、実際に作文や会話で用いようとすると先に挙げたようなおかしな文章が現れるようだ。