BLOG文章表現

日本語教育、留学生の作文教育、日本語の文章や表現の備忘録です。

単なる縮小ではなく再構成が行われている要約文になっている

ある学生さんが授業のレポートで取り上げた要約文を見て、他の学生さんが指摘したことです。
レポートを書いた学生さんは、日本語母語話者と日本語学習者に提言の文章の要約文を書いてもらったそうです。
元の文章と要約文2つを照合して原文のどの部分が要約文に残っているか分析していました。
残存の結果は両方の要約文とも原文の3段構成の主要な内容が盛り込まれており、要約文はどちらも3段落でした。
同じ3段落構成でもよく見ると、一方の要約文は単に原文の文章を縮小したにすぎないのに対し、もう一方の要約文は、序論・本論・結論のように明確な全体構成があって再構成されていました。
第1段落で問題提起、第2段落で例示、第3段落で提言、という構成になっているのです。
原文の表現の要約文への残存だけを見れば、双方の要約文はそれほど違いはありません。
しかし、同じ原文の素材を3つの段落に構成する方法は異なっています。
明確な全体構成が見られる要約文は、第3段落に「このように」という指示詞の機能を併せ持つ順接型の接続表現がありました。
この「このように」は、「したがって」のようにこれまでの論の展開を受けて結論を述べる際の前触れとなる文章展開機能を持っています。
原文の単なる縮小コピーでない再構成された要約文については、語句や文、段落をどのような表現でまとめているかを分析することによって、再構成のあり方を解明することができると考えられます。
ちなみに、縮小の要約文は日本語母語話者、再構成の要約文は日本語学習者が書いたものだとのことです。