BLOG文章表現

日本語教育、留学生の作文教育、日本語の文章や表現の備忘録です。

要約文に組み込まれた原文の言語サイズ

本文を読んで意味はわかるが、要約文を書こうとしても本文の抜き書きになってしまう

要約文の書き方に対する学生さんからのコメントです。

本文の抜き書きとは具体的ににどのような言語サイズで起こっているのでしょうか。
抜き書きは言語サイズの大きさで、文章>段落>文>句>語 という順で小さくなっていきます。
そして、大きければ大きいほど引用に、小さければ小さいほどパラフレーズ、すなわち言い換えになります。

では、要約文作成では抜き書きはどのように位置づけられるのでしょうか。

  1. 書き手が重要な内容だと思う文を抜き出してそのまま並べていく
  2. 書き手が重要だと思う語や句を抜き出して接続詞や接続助詞、連体修飾節などで言い換える

1は本文の重要な言葉に線を引くのとほぼ同じで、言い換える表現力はあまり問われません。
一方、2は言い換える表現力がかなり問われます。

うまいなあと思わせる要約文を書く人は2ができています。

初歩の段階では1を目指し、徐々に2を目指すよう、授業では学生にアドバイスしています。

1から2に行くためには、2の言い換える言語技術を磨く練習が必要でしょう。

言語処理の分野では言い換えの研究が進んでいるようです。
これは日本語教育でも今後応用できそうな予感がします。


・言語処理における要約研究の動向について。
『テキスト自動要約』奥村学・難波英嗣著、人工知能学会編、オーム社、2005年

テキスト自動要約 (知の科学)

テキスト自動要約 (知の科学)


日本語教育における言い換え研究の必要性について。
「発表ツールにおける箇条書き分析−引用に伴う言い換えを中心に−」鎌田美千子・仁科喜久子、CASTEL-J in Hawaii 2007 Proceedings、pp.191-194 http://castelj.kshinagawa.com/proceedings/files/3-A1%20Kamada.pdf
「学部留学生の発表活動に必要な日本語文章表現指導−レジュメ・提示資料に見られる問題点とその指導−」鎌田美千子、『外国文学』54、宇都宮大学、2006年、pp.53-66 http://hdl.handle.net/10241/362
「要約文とパラフレーズの様相」川原裕美、『文章構造と要約文の諸相』佐久間まゆみ編、くろしお出版、1989年、pp.141-167

文章構造と要約文の諸相 (日本語研究叢書 (4))

文章構造と要約文の諸相 (日本語研究叢書 (4))